ブログ

相続対策 <①相続税対策>

私が相談を受ける中で「相続対策を検討している。」という相談があります。では「相続対策」とはどの様なものなのでしょうか?皆さんが考える「相続対策」は、①相続税対策と、②遺産分割(承継)対策、が多いのではないでしょうか?
しかし、私たち司法書士が考える「相続対策」は、それら以外にも「③財産管理対策」などもあります。今回は①の「相続税対策」についてお話しをしたいと思います。(②③については、別の機会に書きたいと思います。)
ここで気を付けなければならないのは、税金のお話は「税理士」の業務であり、私たち司法書士は税金の専門家ではありません。以下の内容は、2022年2月の投稿当時の法律に合わせて、私たち司法書士が遺言や不動産相続の相談を受ける中で説明をする一般的な「相続税」のお話を書かせて頂きました。この様に、私たち司法書士も一般的な税金の話をするときもありますが、これはちゃんと学び・調べているだけでなく、税理士の先生と一緒に相談を受けたり、事前に確認をしたりしたうえでの話です。
私たち司法書士であっても、案件に応じて毎回確認を取りながら手続きをしていますので、皆様も実際に手続きをされる際は、法律が変わっている可能性もありますので必ず専門家に相談をする様にしてください。

【相続対策。どの様に調べていますか?】
ご自身が生前に築いた財産や債務を相続人が受け継ぐ際に、その財産の評価額によって「相続税」の納税義務が生じることがあります。「納税」は国民の義務ですから、相続税は払うのが当然ですが、そもそも相続税は、どれくらいかかるのか、かかるなら「少なくできるなら少なくしたい」と考える方が多いのではないでしょうか?
昨今、インターネットで何でも検索ができ情報が溢れています。その中で、ご自身にあった相続に関する情報をインターネットで探すことは、とても難しく、意外と遠回りです。なぜなら、人生は千差万別でご自身の育ちや考え方、財産の属する権利や物、その種類や性質、その量や価額が異なるだけでなく、相続人の年齢や職業、心身の状態や生活状況なども様々で、皆さん一人一人の状況も異なるからです。しかし、インターネットで調べた情報から、取り敢えず「張りぼて」の対策であるにもかかわらず「対策をしている」と感じてしまう方が居られます。確かに何も対策していない方よりは良いかもしれませんが、本当にそれで良いのでしょうか。
私たち司法書士が考えている「相続税対策」とは、相続税を少しでも少なく有効的に承継することだけを考えている訳ではありません。例えば、不動産を相続しても「税金」は現金でしか納付できないため、せっかく相続した不動産であっても、売却しなければ税金の支払いができなくなるかもしれません。その様な相続税を支払うための資金対策も立派な相続税対策ということになります。

【相続税とは】
相続税法という法律に「相続税」は規定されており、被相続人の財産を相続により取得した人に、財産を偶然に取得したことによる不労所得に対しての特殊な所得税として、相続税という名前の税金がかかることになっています。

【相続税の計算の流れ】
① まず相続や遺贈によって相続人が取得した財産の価額を計算し合計します。そして、相続人が負担した被相続人の《債務や葬式費用》を財産から差し引きます。

《相続等によって取得した財産の総額》-《債務・葬式費用》=《Ⓐ相続財産の合計額》

② 上記のⒶから《遺産にかかる基礎控除額》を差し引きます。(基礎控除の計算方法については次の段落で説明します。)この際にマイナスになることがありますが、その場合は、相続税はかからないということになります。

《Ⓐ相続財産の合計額》-《遺産にかかる基礎控除額》=《Ⓑ課税遺産総額》

③ 遺産を法定相続持分で分割する場合は、下記の計算式で相続税の納付額を計算することができます。

《Ⓑ課税遺産総額》×《法定相続割合》×《税率》-《控除額》=《相続税納付額》

法定相続分に応ずる取得金額    税 率     控除額
1,000万円以下         10%      0円
3,000万円以下         15%    50万円
5,000万円以下         20%    200万円
1億円以下           30%    700万円
2億円以下           40%   1700万円
※ 実際に取得する相続財産が、法定相続持分と異なる場合はさらに計算する必要があります。

【遺産にかかる基礎控除】
遺産にかかる基礎控除額は、定額控除額が3,000万円に、法定相続人比例控除額が法定相続人1人につき600万円を乗じて加算した額となります。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=《遺産にかかる基礎控除額》
また、被相続人に養子がある場合は、法定相続人の数に算入する養子の数に次のような制限があります。
1、被相続人に実子がいる場合には1人
2、被相続人に実子がいない場合には2人まで

【生命保険金や死亡退職金】
被相続人の死亡により、相続人が生命保険金や死亡退職金をもらう場合は、いわゆる「みなし相続財産」として、冒頭の①に含む必要があります。しかし、これらは、遺族の生活保障でもあることから、それぞれ一定の金額までは非課税とされています。この非課税となる一定の金額を非課税限度額といい、それぞれ「法定相続人の数に500万円を乗じた金額」となります。したがって、例えば相続人が妻と子供3人(計4名)の場合は2,000万円まで非課税となり、相続人が受け取った生命保険金の合計が3,000万円、死亡退職金が2,000万円だとすると、課税される生命保険金は1,000万円、死亡退職金については課税対象なしということになります。
このように、相続人が受け取った生命保険金には非課税金額の適用があり、その分相続税が安くなるので節税になります。また、多額の相続税の納税資金としても活用できるメリットもあります。但し、生命保険金を受け取った相続人が相続放棄をすると当該保険金は相続税控除の対象ではなくなるため注意が必要です。

【その他の控除】
●配偶者に対する相続税額の軽減
配偶者が相続した財産が、1億6,000万円以下のときは配偶者の納める相続税はありません。これは、配偶者が被相続人の遺産の形成に寄与していることや老後の生活安定などを考慮して設けられたとされ、婚姻期間や年齢などの制限はありません。但し、内縁関係の配偶者には適用されません。
●未成年者控除・障碍者控除
相続した人が未成年者または障碍者の場合、相続開始のあった日現在から未成年者は20歳に、障碍者は85歳に達するまでの年数1年(1年未満は切り捨て)につき10万円で計算した金額が控除額となります。
これは、その人が未成年者であれば成年に達するまでの養育費・教育費など、障碍者であれば85歳に達するまでの障碍者であるために要する出費を、遺産のうちから負担しなければならないことなどを考慮して設けられたとされています。

相続税とその控除について簡単に一例を紹介しました。

被相続人の残した財産すべてに相続税がかかるわけではありません。しかし、世の中が複雑化し、不動産や車、暗号資産や株券、美術品の評価など専門的な知識を必要とし、ご自身で判断することは難しいと思われます。ご自身の相続財産の総額が基礎控除額を上回ることが予測される場合や、不明な場合には、残される相続人のためにも税理士などの専門家に早めにご相談されることをお勧めします。

また相続税の申告は死亡の翌日から10ヶ月以内という期限があります。その期限を過ぎてしまうと、適用することができた特例などが使えなくなる場合があります。特例が使えないことで相続税の負担が増える、または申告期限が過ぎたことによる追加のペナルティ税などで損することがないよう、早め早めの対応を心掛けたいですね。

関連記事

  1. 相続人に関する用語と相続の順位
  2. 遺産の分割方法は決まっているの?
  3. 相続人が居ない場合はどうなるの?
  4. 相続放棄はどの様にする?
  5. 相続分の算定方法
  6. 外国籍の人の相続
  7. 被相続人が中華人民共和国籍である場合の相続
  8. 被相続人が朝鮮民主主義人民共和国の国籍である場合の相続
PAGE TOP