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被相続人がアメリカ合衆国の国籍である場合の相続

相続の手続きをする中で、手続当事者(相続人や被相続人)が外国籍であったり日本国籍だが外国に居住をしていたりする相談も多くあります。この場合、各国で法律が異なるため相続の手続きも異なります。これまでのブログより「外国籍の人の相続手続き」について書いていますが、今回は、アメリカ合衆国籍(以下「アメリカ」という。)の人の相続について書きたいと思います。

【準拠法を確認する】
 まず「準拠法」を考えなければなりません。これまでのブログにも書いた様に、法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)第36条に「相続は被相続人の本国法による。」と定めていますので、アメリカ国籍の人の相続ではアメリカ合衆国の法律を確認する必要があります。しかし、アメリカは州制をとっており複数の異なった法域を有する不統一法国家となりますので、どの州の法律が本国法になるかを調べなくてはなりません。では、アメリカ人の相続が発生した場合、被相続人の州法に、どの様に規定されているのかを、その都度に確認する必要があるのでしょうか。
 一般的にアメリカを含むコモン・ロー諸国(イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドなど)や、フランス、ベルギー、中国等の相続に関する国際私法は、不動産については不動産の所在地法により、動産については被相続人の死亡時の住所地(または常居所地)の法律によることになっています。
 そして、アメリカの場合は、上でも書いた通り、地方(州)により法律を異にする不統一国家となりますので、通則法第38条3項で「当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(その様な規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする」と規定しています。アメリカは各州が独立の法律を持ち、法律内容も極めて複雑化していますので、アメリカ法律家協会が現行のアメリカ法で有力で妥当なものを簡単な条文形式で体系的に再現し「Restatement of Conflict of Law(以下「RCL」という。)」・「Restatement of Conflict of Law second(以下「RCL2」という。)」として取りまとめています。このRCL及びRCL2はアメリカの国際私法に相当し、各州によって採用しているバージョンを異にしています。
 このRCL第294条によれば、不動産の相続に関しては、不動産の所在地国の法律によると規定しています。また、RCL2第236条第1項では、無遺言所有者の死亡における、不動産に対する権利の承継は、その不動産所在地の裁判所が適用する法律によって決定されると規定し、RCL2第260条では、無遺言死亡に伴う動産の権利の承継は、被相続人が死亡時に居住していた州の裁判所が適用する法律によって決定されると規定しています。つまり不動産は不動産の所在地法、動産は被相続人の死亡時の住居所地法によるということになります。そこで、通則法第41条により反致(2022年8月2日付けブログ「外国籍の人の相続」の【反致】を参照)することになり、日本の法律が適用されることになります。

【法定相続人が誰になるのかを特定する資料の確認】
<死亡証明書、出生証明書、婚姻証明書>
 アメリカには戸籍制度、住民登録制度がありませんので、死亡証明書・出生証明書・婚姻証明書等で証明することになります。しかし、それだけでは確定的に相続人の全員を証明することはできませんので、その他に相続人が存在しない旨の公証人の認証のある宣誓供述書を作成する必要があります。また、住所証明書においては、当事者であるアメリカ人が日本に居住している(中長期在留者の場合)ときは、住民登録をなして外国人住民票を取得することにより住所証明書とすることができ、アメリカ在住のときは、住居所地の住所に居住している旨の公証人の認証のある宣誓供述書をもって住所証明書とすることができます。また、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書についても、相続人であるアメリカ人が日本在住であれば、住民登録をなして印鑑を登録することにより、当該市区町村で印鑑証明書を発行してもらうことができ、印鑑登録をしていなければ、アメリカ大使館領事部において、サイン証明書を発行してもらうことになります。また、当該遺産分割協議書へ直接、領事部の担当者の面前で宣誓のうえ署名して認証(署名証明)してもらうこともできます。さらに、その者がアメリカ在住であれば、当該遺産分割協議書へ直接、公証人の面前で署名するか、公証人の認証のあるサイン証明書を交付してもらい、当該遺産分割協議書に添付すれば良いことになります。

<外国人登録原票>
 在日外国人に対して「外国人登録原票」という制度がありました。平成24年7月9日に廃止されていますが、外国人登録原票には、出生地や国籍、住所や居所、婚姻や子供などの親族関係が記載されているので、平成24年7月8日以前に来日している場合は、相続関係書類として取得する必要があります。

 相続手続きと聞くと、亡くなった後の手続きと思われがちですが、上記の内容を読んで、どの様に思われたでしょうか?ご自身やご自身の周りに外国籍の方が居られ、相続が発生した場合、日本の法律が適用されるのか、適用されないのかを分かっていたら、遺言書の作成や生前整理など、色々と考えることが出来ると思います。
 相続手続きは亡くなってからの話ではなく、亡くなる前からのお話です。ご自身と、ご自身の大切な人のために、相続人が誰になるのか、どの様な相続財産があり、どの様な手続きが出来て、誰に何をどう相続させたいのかなど、生きている間に検討してみては如何でしょうか。

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