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相続が発生したとき、相続人が必ず居るとは限りません。
昨今、内縁関係の夫婦や超高齢化社会など世の中の常識が変化し、法律関係が複雑化する中で、被相続人の世話を続けている人が相続人とならない場合や、相続人が存在するかどうか不明な相続案件が増えています。この様な「相続人不存在」の場合に、残された財産だけでなく、病院の費用や葬儀費用の支払いなど、どの様にしたら良いのでしょうか?
【相続人が存在しない場合の財産管理について】
被相続人が死亡したが、相続人のあることが明らかでないときの相続財産は、相続開始と同時に法律上当然に法人(相続財産法人)とされ、この管理を行う相続財産管理人が必要となります。とは言え、勝手に相続財産管理人が選任される訳でもなく、この相続財産の管理は、利害関係人または検察官の申立てに基づいて、家庭裁判所が相続財産管理人を選任することから始まります。
この相続財産管理人は、相続財産法人の代表者として相続財産の散逸を防止し、管理をすると共に、相続人を捜索し、被相続人の債権者や遺言による特定財産の受遺者の権利保護を図るため、相続財産の管理・清算を行います。
この相続財産管理人の制度における手続きの流れは次のとおりです。
1.相続財産管理人の選任とその公告(2ヶ月)
2.相続債権者・受遺者への債権申出(2ヶ月)
3.相続債権者・受遺者への弁済、相続財産の管理
4.相続人の捜索の公告(6ヶ月)
5.相続人が存在しないことが確定した場合、特別縁故者の相続財産の分与申立(3ヶ月以内)
6.残存財産の国庫への引き継ぎ
【相続人の不存在とは】
相続人不存在とは、被相続人の相続人が居ないことが明確な場合だけでなく、法定相続人が存在するか、存在しないか分からない場合を言います。戸籍により相続人があることが明らかである場合は、その行方や生死が不明であったとしても不存在に当たりません。
【相続財産管理人の選任と債権の届出】
相続財産管理人の選任を申し立てることができる者は、利害関係人(相続債権者、受遺者、特別縁故関係にあるとする者、相続財産について権利を取得しようとする者等)又は、検察官です。申し立てによって家庭裁判所が相続財産管理人を選任したときは、遅滞なく管理人が選任された旨の公告を行います。この公告の2ヶ月以内に相続人が明らかにならなかったときは、管理人は清算手続きに着手します。具体的には、まず相続債権者及び受遺者に対して、2ヶ月を下らない一定期間を定めて、この期間内に申出がなければ清算から除斥される旨を明示して債権の申出をする旨の公告を行います。なお、管理人は知れたる債権者や受遺者がある場合は、格別に申出の催告をする必要がありますが、この知れたる債権者らは申出をしなくとも清算から除斥されることはありません。
【弁済・清算】
相続財産管理人は、債権申出公告期間内は、弁済期の到来した相続債権者及び受遺者からの弁済請求があっても、その弁済を拒むことができます。但し、留置権、特別の先取特権、質権、抵当権のような相続財産に対して優先権を有する債権者等は上記公告期間中といえども、その権利を行使することができるとされており、管理人はこれを拒むことはできません。
次に、債権申出公告期間が満了すると、管理人は知れたる債権者や申出によって確定した債権者らに対して弁済をすることになります。弁済の順序は次のとおりとなります。
1.優先債権者
2.一般債権者
3.受遺者
相続債権者・受遺者への弁済をしても残余財産がある場合は、上記の債権申出公告期間内に申出をしなかった相続債権者・受遺者であっても、管理人に申し出ることにより弁済(第2次清算)を受けることができます。また、債権申出公告期間内の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は6ヶ月以上の期間を定めて相続人捜索の公告をします。この相続人捜索公告期間内に相続権を主張する者が現れずに期間が満了すると、相続人及び第2次清算の申し出をしなかった相続債権者・受遺者はその権利を失い除斥されることになります。従って、第2次清算はこの最後の公告期間内に行われることが許されます。
【相続人不存在の確定】
最後の相続人捜索公告の期間内に相続権を主張する者が出現しなければ相続人不存在が確定します。そして、この相続人捜索公告の期間満了後3ヶ月以内に、特別縁故者は家庭裁判所に相続財産分与を申し立てることができ、特別縁故者に対して相続財産が与えられたのち、なおも財産が残存するときは国庫に帰属することになります。
相続手続きは、死亡してからの手続きと思っている方も多いと思います。確かに今回お話した「相続人不存在の手続き」は、亡くなって(相続が発生して)からの手続きかもしれません。しかし、これまでのブログでも書きましたが、相続手続きは亡くなる前からのお話しです。もし、相続人が存在するのか事前に分かっていたら。もし、遺言書を作成していたら。など、色々と考えることが出来ると思います。
ご自身と、ご自身の大切な人のために、相続人が誰になるのか、どの様な相続財産があり、どの様な手続きが出来て、誰に何をどう相続させたいのかなど、生きている間に検討してみては如何でしょうか。