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被相続人がカナダ国籍である場合の相続

相続の手続きをする中で、手続当事者(相続人や被相続人)が外国籍であったり日本国籍だが外国に居住をしていたりする相談も多くあります。この場合、各国で法律が異なるため相続の手続きも異なります。これまでのブログより「外国籍の人の相続手続き」について書いていますが、今回は、カナダ国籍(以下「カナダ」という。)の人の相続について書きたいと思います。

【準拠法を確認する】
まず「準拠法」を考えなければなりません。これまでのブログにも書いた様に、法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)第36条に「相続は被相続人の本国法による。」と定めていますので、カナダ人の相続手続きはカナダの法律を確認する必要があります。ところが、カナダはアメリカ合衆国と同様に州制を採っており(前回のブログ参照)、州によって法律を異にする不統一法国となります。よって、どの州の法律が本国法になるかを調べなくてはなりません。しかし、通則法第38条3項で「当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(その様な規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする」と規定しています。そして、カナダはコモン・ローを採用している国になりますので、コモン・ローの原則により、その者の住所地法が最も密接な関係がある地域の法となり、不動産については不動産の所在地法、動産については被相続人の死亡時の住所地(または常居所地)の法律によることになります。従って、被相続人が日本国内に不動産を所有していた場合は、その不動産の所在地の法律(日本法)に従うことになり、動産についても、被相続人が日本国内に住所を有していた場合は日本法が適用されます。
上記の通り、準拠法が日本法になる場合は、法定相続人の範囲や順位なども日本法に従って決せられることになるので、特段の説明は不要だと思います。しかし、準拠法がカナダの各州法となる場合(常居所地がカナダorカナダ国内の不動産相続)は、カナダの州法が適用されますので確認する必要があります。

【法定相続人が誰になるのかを特定する資料の確認】
<死亡証明書、出生証明書、婚姻証明書>

カナダには戸籍制度、住民登録制度がありませんので、相続を証する書面としては、前回のブログに書いているアメリカ合衆国籍の人の相続と同じになりますので、前回のブログ被相続人がアメリカ合衆国の国籍である場合の相続を参照してください。

<外国人登録原票>
在日外国人に対して「外国人登録原票」という制度がありました。平成24年7月9日に廃止されていますが、外国人登録原票には、出生地や国籍、住所や居所、婚姻や子供などの親族関係が記載されているので、平成24年7月8日以前に来日している場合は、相続関係書類として取得する必要があります。

相続手続きと聞くと、亡くなった後の手続きと思われがちですが、上記の内容を読んで、どの様に思われたでしょうか?ご自身やご自身の周りに外国籍の方が居られ、相続が発生した場合、日本の法律が適用されるのか、適用されないのかを分かっていたら、遺言書の作成や生前整理など、色々と考えることが出来ると思います。
相続手続きは亡くなってからの話ではなく、亡くなる前からのお話です。ご自身と、ご自身の大切な人のために、相続人が誰になるのか、どの様な相続財産があり、どの様な手続きが出来て、誰に何をどう相続させたいのかなど、生きている間に検討してみては如何でしょうか。

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