ブログ

被相続人がベトナム国籍である場合の相続

相続の手続きをする中で、手続当事者(相続人や被相続人)が外国籍であったり日本国籍だが外国に居住をしていたりする相談も多くあります。この場合、各国で法律が異なるため相続の手続きも異なります。これまでのブログで「外国籍の人の相続手続き」について書いていますが、今回は、ベトナム国籍(以下「ベトナム」という。)の人の相続について書きたいと思います。

【準拠法を確認する】
まず「準拠法」を考えなければなりません。これまでのブログにも書いた様に、法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)第36条に「相続は被相続人の本国法による。」と定めていますので、ベトナム人の相続ではベトナムの法律を確認する必要があります。では、ベトナムの法律にはどの様に規定されているのでしょうか。ベトナム法を確認すると「相続は、相続される被相続人が死亡の直前に国籍を有していた国の法令に従って確定される」と規定されています(2015年11月24日成立、2017年1月1日施行のベトナム民法(以下「新ベトナム民法」という。)680①)。また、不動産に関する相続権の行使については「不動産が所在する地の国の法令に従って確定される」とされています(新ベトナム民法680②)。そうすると、日本国内で死亡したベトナム人の相続についてはベトナム法が適用されることになりますが、日本国内に不動産を所有していた場合、当該不動産の相続については、その不動産の所在地の法律(日本法)に従うことになります。
ところで、被相続人が遺言を残していた場合はどの様に取り扱うのでしょうか。遺言の作成、変更又は撤回の能力は、遺言を作成、変更又は撤回した時点で、遺言者が国籍を有する国の法令に従って確定される(新ベトナム民法681①)が、遺言の形式(自筆証書など)は、遺言が作成された地の国の法令に従って確定されます(新ベトナム民法681②)。もし、被相続人が日本国内で遺言を作成している場合は、作成時の遺言能力の有無については、ベトナム法により判断され、他方で、遺言の形式(有効無効)については、日本法に従って判断されることになります。(JICAのウェブサイトで「ベトナム六法(ベトナム民法)」の日本語訳を閲覧することができます。)

【法定相続人の範囲と順位の確認】
法定相続人については、新ベトナム民法651条に下記の様に定められています。


第651条(法定相続人)
1 法定相続人は、次の順序に従って規定される。
a)第一相続順位は、死亡した者の配偶者、実父、実母、養父、養母、実子、養子からなる。
b)第二相続順位は、死亡した者の父方の祖父母、母方の祖父母、実の兄弟姉妹、父方の祖父母・母方の祖父母である死亡した者の実孫からなる。
c)第三相続順位は、死亡した者の曾祖父母、死亡した者の伯父・伯母、叔父・叔母、死亡した者の実の甥・姪、死亡した者の実の曾孫からなる。
2 同じ相続順位にある複数の相続人は、相互に均等の遺産部分を享受する。
3 死亡したか、遺産を享受する権利を有しないか、相続権を取り消されたか、遺産の受領を拒否したかの理由で先相続順位の者がいない時にのみ、次相続順位の者は相続を享受することができる。


と規定しています。簡潔にまとめると
第一相続順位:配偶者、実父母、養父母、実子、養子
第二相続順位:祖父母、兄弟姉妹、実孫
第三相続順位:曾祖父母、伯父母、叔父母、甥、姪、曾孫
となります。
なお、継子と継父母についても、親子のように面倒をみて、扶養している関係にあるときは、互いの財産を相続することができると規定されています(新ベトナム民法654)。
<代襲相続>
代襲相続についても新ベトナム民法第652条に「遺産を残した者の子が、遺産を残した者より先に死亡した又は同時に死亡した場合、遺産を残した者の孫は、自分の父又は母が存命していれば享受する遺産の部分を享受することができる;遺産を残した者の孫も、遺産を残した者より先に死亡した又は同時に死亡した場合、曾孫は、自分の父又は母が存命していれば享受する遺産の部分を享受することができる。」と規定されており、孫・曾孫の代襲相続及び再代襲相続が認められます。

【相続分の確認と遺産の分割】
法定相続分について「同じ相続順位にある複数の相続人は、相互に均等の遺産部分を享受する(新ベトナム民法651②)。」と規定され、非常にシンプルとなっています。例えば、第一相続順位の配偶者・実父母・実子・養子が法定相続人となる場合、配偶者:実父:実母:実子:養子=1:1:1:1:1となります。
また、相続開始が通知された後、相続人は遺産分割の方法の合意をすることができ、その合意は文章によりなされなければならない(新ベトナム民法656)。と規定されています。

【法定相続人が誰になるのかを特定する資料の確認】
ベトナムには戸籍制度が存在し、戸籍謄本を取得することによって相続関係を明らかにすることが出来ます。ベトナムの戸籍制度は、中華人民共和国の戸籍制度を倣ったものですが、2017年に現行の戸籍制度を廃止し、日本の様なマイナンバー制度が旧戸籍制度に代替する旨が発表されておりました。2023年1月から、ベトナム国民は、事前にチップ付き人民証明書を申請・取得し、国は電子データを介して市民を管理しています。この旧戸籍制度の廃止は、戸籍の登録が不要になったという事ではなく、行政業務を行うための戸籍簿の提出が必要なくなったというもので、国は居民の情報を管理し続け、市民は通常通り出生・婚姻・離婚や住所又は一時的な居所を登録する必要があります。よって、相続人を確定する資料として、ベトナム本国から戸籍を取り寄せる必要があります。

<外国人登録原票>
在日外国人に対して「外国人登録原票」という制度がありました。平成24年7月9日に廃止されていますが、外国人登録原票には、出生地や国籍、住所や居所、婚姻や子供などの親族関係が記載されているので、平成24年7月8日以前に来日している場合は、相続関係書類として取得する必要があります。

相続手続きと聞くと、亡くなった後の手続きと思われがちですが、上記の内容を読んで、どの様に思われたでしょうか?ご自身やご自身の周りに外国籍の方が居られ、相続が発生した場合、日本の法律が適用されるのか、適用されないのかを分かっていたら、遺言書の作成や生前整理など、色々と考えることが出来ると思います。
相続手続きは亡くなってからの話ではなく、亡くなる前からのお話です。ご自身と、ご自身の大切な人のために、相続人が誰になるのか、どの様な相続財産があり、どの様な手続きが出来て、誰に何をどう相続させたいのかなど、生きている間に検討してみては如何でしょうか。

関連記事

  1. 被相続人がフィリピン国籍である場合の相続
  2. 遺言で不動産を記載する場合に注意が必要だと知っていますか?
  3. 被相続人がカナダ国籍である場合の相続
  4. 被相続人が朝鮮民主主義人民共和国の国籍である場合の相続
  5. 相続人が居ない場合はどうなるの?
  6. 遺産分割協議とはどの様なものなの?
  7. 被相続人が台湾国籍である場合の相続
  8. 被相続人がアメリカ合衆国の国籍である場合の相続
PAGE TOP