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【ある日突然、家族を襲った悲劇。事故で夫と夫の父が死亡…。お腹の子に相続権は?】
妊娠中の女性が、夫とその父(以下「父」という。)を同時に亡くしたとします。このような状況で、まだ生まれていないお腹の子に「相続権」はあるのでしょうか?この場合「夫の相続」と「父の相続」の2つの相続について考える必要があります。
【夫の相続について】
民法第886条第1項には「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」と規定されています。従って、夫の相続については、妻とお腹の子(以後「胎児」という。)に相続権あります。
【父の相続について】
民法第32条の2には「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。」と規定されています。この規定により、夫は、父の死亡時点で生存していなかったと推定され、父の相続人にはなりません。しかし、胎児は民法第886条第1項より、既に生まれたものとみなされるため、夫の代襲相続人となる権利があることになります。
【胎児の相続権について】
上記のとおり、胎児がすでに懐胎されていた場合、相続に関しては、既に生まれたものとして扱われますが注意点があります。
民法第886条第2項に「前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。」と規定しており、胎児が生きて生まれなかった場合は、相続させる必要がないので適用されず、生きて生まれることで初めて相続権が確定します。
相続は、被相続人の死亡と同時に、その権利義務の全てを相続人に承継させる制度ですので、原則として、相続人は被相続人の死亡時点で権利能力を持っていなければならないという「同時存在の原則」があります。これは、人の権利能力は出生によって初めて発生するという法の原則に基づいています(民法第3条第1項)。しかし、この同時存在の原則に従うと、被相続人の子であっても、相続開始時に胎児であった者は権利能力がなく、相続する資格がないことになってしまいます。同じ被相続人の子であるのにもかかわらず、胎児であるという理由だけで相続できないとなると、やがて生まれてくる子にとって、あまりにも不公平でかつ不利益です。そこで、民法は例外的に「胎児は相続に関してはすでに生まれたものとみなす。」と規定し「死体で生まれたときは適用しない。」と規定しました。この考え方として、判例は「胎児は、もともと権利を取得する能力がなく、出生によって生じた能力が相続に関するかぎり相続開始のときまで遡る」と解しています。
【まとめ:命の始まりとともに始まる「権利」】
胎児であっても、すでに懐胎されていたならば、相続に関しては「生まれたもの」として扱われます。これは、法が命の尊厳と公平性を重視している証でもあります。
家族の形が多様化する現代において、こうした法的な知識は、いざという時に大きな助けになります。相続に関する疑問や不安がある場合は、早めに専門家(司法書士や弁護士)に相談することをおすすめします。
【最後に】
相続手続きと聞くと、どうしても親や祖父母の相続を考えることが多いかもしれません。しかし、「遺言」や「生前整理」をすることで、相続人にスムーズに財産を承継することができます。
私は、遺言や生前整理をすることは「相続人に対する思いやり」だと考えています。ご自身の財産を確認して、その財産を誰に承継させたいのかを事前に考えることで、生前整理などにもつながることにもなります。
ご自身と、ご自身の大切な人のために、相続人が誰になるのか、どの様な相続財産があり、どの様な手続きが出来て、どの様な財産を残し、誰に何をどう相続させたいのかなど、生きている間に検討してみてはいかがでしょうか。