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未成年の相続放棄の熟慮期間は

これまでのブログで相続放棄についての色々を書いていますが、相続人が未成年者である場合の相続放棄のご相談を受けることがあります。

過去の相談で「離婚した元配偶者が死亡した。子供が相続人になるが未成年だから何もしていない。死後の手続きも元配偶者の両親が行い、子供が引き継げる相続財産はないと聞いていた。最近になって債権者と名乗る人から支払催告の通知が送られてきたので相続放棄をしたい。元の配偶者はダラシナイ人だったので絶対に負債があると思っていたし、私は離婚して本当に良かった。子供は未成年だから支払う必要はないですよね。」という感じの相談があります。

この相談を受けた段階で、すでに子供が相続人となったことを知ってから半年以上経過していました。しかし、相続人である子供は未成年であり、相続放棄をするのか否かを本人が判断する能力はありません。さて、この場合は、どの様になるのでしょうか。

これまでのブログで、相続放棄や限定承認の「熟慮期間」について書かせていただきました(「相続放棄はどの様にする? | 司法書士上野秀章事務所」や「熟慮期間後でも相続放棄はできるのか? | 司法書士上野秀章事務所」を参照)が、この内容を読んでくれた人は、すでに答えは分かっているのではないでしょうか。

 

【未成年者の熟慮期間】

まず初めに、上の事例で「子供は未成年だから支払う必要はないですよね。」とありますが、今回の事例では、未成年だから支払う義務がないということはありません。例えば、未成年者が勝手に買い物をしてきたという話であれば、取消事由や無効事由が存在するかもしれません。しかし、相続の場合は別です。未成年者であっても債務を相続し支払い義務を承継します。従って、今回の事例では、相続放棄ができるのか否かの問題となるのです。そして、その相続放棄について、これまでのブログで何度も書きましたが「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に」家庭裁判所に対して相続放棄の申述をする必要があり、それは未成年であっても同じといえます。

しかし、未成年者の場合、熟慮期間は「法定代理人が未成年者のために相続の開始があったことを知った時から起算する。」とされていますので、親権者である相談者が、未成年の子が元配偶者の相続人となったことを知ったときから起算するということになります。

そして、今回の事例では、子供が相続人であることを知ってから半年以上経過しているため、熟慮期間を経過していますが、過去のブログ(「熟慮期間後でも相続放棄はできるのか? | 司法書士上野秀章事務所」)でも解説したとおり、被相続人の死後手続きを行った元配偶者の両親から引き継げる相続財産はないと聞いており、その後に債権者から支払いの催告書が送られてきて初めて、被相続人の財産があることを知ったということ事例ですので、相続財産である債務があることを知った時が熟慮期間の起算点となると考えられます。

 

今回の事例では、熟慮期間を経過した後に相続放棄を行うことについて、債権者が文句をいうことはなかったので相続放棄は叶いましたが、相続放棄について債権者が異議申立てを行うことも考えられます。もしかすると、相談者の「絶対に負債があると思っていた」という言葉を切り取ると、起算点のタイミングで争いが生じるかもしれませんし、裁判で相続放棄が認められないかもしれません。

従って、今回の相談者さんには「元配偶者さんに負債があると思っていて、元配偶者さんの両親が死後手続きを行っていたり、子供が引き継げる相続財産はないと聞いたりした段階で、子供の相続放棄を考えてあげてください。」とお伝えしたことは言うまでもありません。

 

【最後に】

これまでのブログで、熟慮期間を経過しても相続放棄ができる場合があるとは書きましたが、あくまでも「可能な場合がある」だけであり、相続が発生したら被相続人の財産調査を行い、熟慮期間内に相続放棄をするか否かを決める様にして欲しいと思います。

相続手続きと聞くと、どうしても親や祖父母の相続を考えることが多いかもしれません。しかし、「遺言」や「生前整理」をすることで、相続人にスムーズに財産を承継することができます。

私は、遺言や生前整理をすることは「相続人に対する思いやり」だと考えています。ご自身の財産を確認して、その財産を誰に承継させたいのかを事前に考えることで、生前整理などにもつながることにもなります。

ご自身と、ご自身の大切な人のために、相続人が誰になるのか、どの様な相続財産があり、どの様な手続きが出来て、どの様な財産を残し、誰に何をどう相続させたいのかなど、生きている間に検討してみてはいかがでしょうか。

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