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被相続人が中華人民共和国籍である場合の相続

前回のブログで「外国籍の人の相続」について書きましたが、相続の手続きをする中で、手続当事者(相続人や被相続人)が外国籍であったり日本国籍だが外国に居住をしていたりする相談も多くあります。また、各国で法律が異なるため相続の手続きも異なります。代表的な国籍の相続手続きについて、まとめていきたいと思います。

今回は「中華人民共和国籍(以下「中国」という。)の人の相続」です。

 

【準拠法を確認する】

まず、前回のブログに書きました「準拠法」を考えなければなりません。法の適用に関する通則法第36条に「相続は被相続人の本国法による。」と定めていますので、中国法を確認する必要があり、中華人民共和国渉外民事関係法律適用法31条に「法定相続については、被相続人の死亡時の常居所地の法律を適用する。ただし、不動産の法定相続については、不動産所在地の法律を適用する。」とされています。よって、被相続人が日本国内に常居所地を有していた場合の相続処理は日本法が適用され、不動産を所有していた場合は、その不動産の所在地の法律に従うことになります。

 

【法定相続人の範囲と順位の確認】

上記の通り、準拠法が日本法になる場合は、法定相続人の範囲と順位は日本法に従って決せられることになるので、特段の説明は不要だと思います。しかし、準拠法が中国法となる場合(常居所地が中国or中国国内の不動産相続)は、中国法が適用されますので、中国法を確認する必要があります。

中華人民共和国承継法(以下「承継法」という。)が、中国での相続のルールを定めています。承継法によると、法定相続人の順位は以下の通りとなります。

第1順位 配偶者・子・父母

第2順位 兄弟姉妹・祖父母

  • 日本と同様に、第1順位の相続人が不存在の場合に、第2順位の相続人が相続人となります。
  • 代襲相続も認められますが、代襲原因は先死に限られ、相続権の喪失や放棄は代襲原因となりません(承継法10②)。

 

  • 配偶者について

中国も日本同様に法律婚制度が採用されていますが、事実婚関係にある配偶者も、法定相続人として認められることに注意が必要です。

  • 子について

胎児にも相続権が認められます(承継法28)。

嫡出子・非嫡出子の別は、法定相続人の地位に影響しません(承継法10③)。

養子・扶養関係にあった継親子間にも、実親子間と同じく相続権があります(承継法10③)。

  • 父母について

実父母だけでなく、養父母、扶養関係にある継父母も法定相続人となります(承継法10④)

  • 兄弟姉妹について

同父母の兄弟姉妹だけでなく、同父異母・異父同母の兄弟姉妹、養子縁組による兄弟姉妹、扶養関係にある継兄弟姉妹(血縁関係のない兄弟姉妹。連れ子など)も法定相続人となります(承継法10⑤)。

(「扶養関係にある」とは、兄又は姉が生活能力のない弟又は妹を扶養している状態、また、成年した弟又は妹が生活能力のない兄又は姉を扶養している状態)

  • 祖父母について

養祖父母だけでなく、扶養関係のある継祖父母も法定相続人となります。

 

以上のとおり「扶養関係にあるか」どうかで、相続人になる者、ならない者が生じるため、画一的に相続人を確定することができません。

 

【法定相続人が誰になるのかを特定する資料の確認】

中国には、戸籍制度が存在(1958年制定の「戸口登記管理条例」に基づき、一元的な国民の戸籍管理を実施しており、戸籍の登録機関である都市および郷、鎮の人民委員会や公安局派出所において、戸口登記簿が作成されます。また、各世帯には、居民戸口簿と呼ばれる冊子が配布されており、それには、戸別・戸主の姓名、戸口番号・住所の記載、また各構成員のページには、姓名・戸主であるか否か(否の場合は戸主との関係)・性別・出生地・籍貫・民族・生年月日・居民身分証番号・婚姻状況・職業・勤務場所・前住所地等の記載がなされています。)し、日本における戸籍簿と住民基本台帳に似た働きを有していると考えられていますが、日本の戸籍制度と比べると不完全な部分もあり、日本の様に相続人を確認するための資料としては用いられません。

この戸口登記簿の記載を日本における相続証明書として使用できる様にするためには、居民戸口簿と居民身分証を持参のうえ、戸口登録機関である公安局派出所等に出頭し、その内容を記載したものに証明印を受け、それを公証処と呼ばれる日本における「公証役場」に相当する国の機関に持参して、公証員(日本の公証人)に出生証明書、居住証明書、親族関係証明書等の公証書(日本の公正証書)を作成してもらうことが一般的です。なお、各公証処で運用が異なることがあるため、一例として書かせて頂きます。(手続きの流れや必要書類の内容は各公証処にご確認ください。)

 

  1. 相続人は、相続が開始したことを証明する書類(例:病院が発行した死亡証明書)と、被相続人との身分関係を証明する書類(例:IDカード・居民戸口簿・結婚証明書・出生証明書)を持参して、公証処に行き、公証人に相談します。
  2. 公証人から、相続のケースごとに、具体的に必要になる相続人の確認書類を指示されます。
  3. 相続人は、公証人から指示された必要書類を集め、また、必要書類から推測される相続人全員に対して、相続人を確定する公証書を作成するため公証処に来てほしい旨の連絡をします。
  4. 所定の日時を定めて、担当の公証人と全相続人が公証処に集まります。ここで、改めて相続が開始したことを証明する書類、各相続人について被相続人との身分関係を証明する書類が公証人によって確認され、相続人の名前の一覧が記された公証書が作成される。(子について、一人っ子である場合において、公証書に「息子(娘)であることを証明する。」と書かれることが多いため、この内容では、その他の兄弟姉妹が居ないことが読み取れないため、一人っ子(独生子)である旨を記載してもらうことが出来るか確認する必要があります。)
  5. 公証書が中国語で作成されるので、日本(法務局や金融機関等)で相続関係を証明するためには、公証書の日本語訳を作成する必要があります。(公証処では日本語で作成してもらうことはできませんが、相続人が公証書の内容の日本語訳を準備しておけば公証書に綴じこんでもらうことが出来る場合があります。)
  6. 日本在住の相続人が、中国在住者(親族等)に委任状を送付して前記の交渉手続きに参加することも可能(地方によっては許さない地方もあるようです。)ですが、その場合は駐日本国中国大使館における認証手続きを経た委任状が必要となります。

<外国人登録原票>
在日外国人に対して、日本国内で外国人登録原票という制度がありました。平成24年7月9日に廃止されていますが、外国人登録原票には、出生地や国籍、住所や居所、婚姻や子供などの親族関係が記載されているので、平成24年7月8日以前に来日している場合は、相続関係書類として取得する必要があります。

上記の内容を読んで、どの様に思われたでしょうか?

相続手続きと聞くと、亡くなった後の手続きと思われがちですが、ご自身やご自身の周りに外国籍の方が居られ、相続が発生した場合、日本の法律が適用されるのか、適用されないのかを分かっていたら、遺言書の作成や生前整理など、色々と考えることが出来ると思います。

相続手続きは亡くなってからの話ではなく、亡くなる前からのお話です。ご自身と、ご自身の大切な人のために、相続人が誰になるのか、どの様な相続財産があり、どの様な手続きが出来て、誰に何をどう相続させたいのかなど、生きている間に検討してみては如何でしょうか。

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